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マイは辺りをキョロキョロと見渡し、不思議そうに首を傾げた。
「瑠珂は?」
春日とサクラが同時に「バイト」と答える。
「こんな時までバイト!?」
マイはその愛らしい目玉が落ちるんじゃないかってほど大きく目を見開いた。そして頬をパンパンに膨らまし「もう、いけずなんだから~」と不満を零す。かと思いきやすぐに機嫌を直し、テーブルを回って俺の方に寄ってきた。
「ねぇ順平。昨日の瑠珂との感動の再会はどうだった?」
期待に満ちたキラキラと輝く瞳に見つめられる理由が分からず、俺は首を傾げる。
「想い合ってる二人なら間違いなく熱い抱擁よね! その先があったとしても今はいらないわ! 感動的な部分だってカットしてくれたら後はこっちで美味しくいただくから!」
力強い言葉の半分も理解できず、首が限界まで傾いてしまう。
「女子ってなんでキレイな部分だけ欲しがるの? その先が大事じゃない?」
サクラの疑問に対し、マイは分かって無いなと言わんばかりに首を横に振る。
「女は愛の大きさが分かれば満足するのよ」
「身体の関係はいらない?」
「いらないとは言ってない。一回で完結したら楽しみが減っちゃうじゃない」
マイのこだわりに「エェ!?」と異議を挟むのは春日だ。
「キレイ事を言うな! 今まで好き放題、勝手に妄想して勝手に興奮してたくせに!」
「物事には順序があるのよ。AVみたいに出会ってすぐにベッドインの展開は望んでないの。相手を想うがゆえに我慢する、本音を隠す、じっと耐え凌ぐ、そうゆうプロセスがあるから燃えるんじゃない。 もう我慢できない、限界ってところまで追い詰めるほど愛の絆は深まるものなのよ」
マイは両手を握り合わせ、明後日の方向をうっとり眺めながら饒舌に語った。噛み付いていた春日が途端に戦意を失くすほど、自分の世界に浸っている。
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