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「面白そうじゃん。順平のいう有効な方法って何?」
はじめて聞く声だったけれど、誰のものかすぐに分かった。
ずっとDSで遊んでいたドレッドヘアの男だ。このグループのリーダー格みたいな奴で、普段から異色のオーラを放っている。
「サクラ終わった? 次は俺だよ」
「まだだよ。勿体つけずに教えろよ、順平」
高幡順平の手が止まった。
激痛が止まり、ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、高幡順平は誰も想像しない一言を放った。
「本命ができたら浮気はしないだろ」
今、なんと言った……?
面白くないのに笑いが込み上げてくる。それは俺だけではなく、高幡順平を除く全員が同じだった。
「そいつに本命が出来りゃ誰も苦労しないだろうよ」
「平気で浮気する、寝取る、裏切るって有名じゃねえか」
「樋口は日本一のヤリチンだもんな」
「や、世界一だろ」
「すげえ。世界でナンバーワンかよ」
自分を小馬鹿にした悪口さえ、このときばかりは同意したくなった。
俺は本命なんてつくらない。必要としない。一人の女に縛られるのはご免だ。なによりもそんなものは出来る気がしない。遊ぶ相手をどうして一人に絞らなくてはいけないのか、理解ができない。
「浮気や女遊びを許さず、常に見張っている恋人がいればいいだろ」
高幡順平は何も知らないお気楽ヤローよろしく能天気なことを言う。
もはや大きな笑いは起きない。周りは呆れ果てている。
「どこにそんな最強な女がいるんだよ」
誰かが叫んだ。
まったくだ……。
けれど高幡順平は不気味なほどニコニコしていた。
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