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「ここ」  一瞬、耳が聴こえなくなり世界から音が消えた。 「は……?」  誰かの素っ頓狂な声によって我に戻る。  ほんの数秒、音を失っていただけでひどく混乱した。  そんな俺を、高幡順平は不敵な笑みを浮かべて見下ろす。 「樋口、俺と付き合おうか」  今度はハッキリと聞こえてしまった。  何がなにやら分からず呆然となった俺に代わり、周りから一斉に驚きの声が上がった。 「ハアァ!?」 「なんでそうなる?」 「意味が分かんねえ」  男達の騒ぎが俺には恐ろしいだけだった。  人を絶望に追いやるほどの突然の天変地異なんて滅多に起こるわけがない。仮にそれが自分に起きたとしても、俺は大概のことは淡々と受け入れる自信がある。  今まさに人生最大の災難に見舞われていたかもしれないが、高幡順平の言葉を信じられる筈がなく実感が持てなかった。
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