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…………くそっ!
不意打ちとはいえ、奴のいいように絡まれるのが悔しい。
目で追っていた背中が教室の中央の席に腰を下ろすと、たちまち周りに人が集まった。俺には不快でしかない笑い声を上げ、派手なリアクションやパフォーマンスで注目を浴びる。
腹立たしくなり、机を思いっきり殴った。けれど俺の怒りは誰にも伝わらない。教室にいる者は皆、高幡順平を見ている。
この時まで俺は、高幡順平の接触は嫌がらせでしかないと思っていた。一週間前の延長でちょっかいを出してくるだけだと。
ねちねちした嫌がらせは弱さを見せず、平然と受け流し、相手にしないのが一番の得策だ。
けれど、相手が高幡順平というだけでどうだろうか。冷静になるどころか怒りが増し、無視ができない。
落ち着け。気にするな。何度も頭の中で繰り返すうちにチャイムが鳴ってしまい、抜け出すタイミングを逃してしまう。
……少しの辛抱だ。心に壁を作り、何事にも動じず、いつもどおり静かに座っていれば、気の重い朝礼は10分程度で終わる。
付け焼き刃の冷静を取り戻したのに、まさかこの後で自分にとんでもないことが起こるとは、思いもしなかった。
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