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「洩れがないようにな。ちゃんと話し合って決めろよ」 「野球部のテツローはベースボール、と……」 「最後まで聞け! 運動部に所属の者は専属の種目には出られないからな」  担任の一言でまたブーイングが起こった。  勝手に選手の振り分けを始めていた高幡順平は、大袈裟な身振りでシャーペンを机の上に転がした。 「はいはいはい、静かに! だから、ちゃんと話し合って決めるようにって言ってるだろ。分かったか?」  笑うことも抗議することも一体感を見せるクラスは、静かになるのも同時だった。  返事がどこからも上がらない。担任は白けてしまったクラスを見渡して肩を落とした。 「……放課後、みんなでちゃんと話し合ったらご褒美を用意してやるよ」  優勝よりも居残りに褒美が出るのか? この担任は甘過ぎだろう。  呆れているのは俺だけで、クラスはたちまち喜びのどんちゃん騒ぎになった。たかがジュース1本でどうしてこんなに騒げるのか、理解ができない。 「そのかわり全員が参加だからな。一人でも欠けたら褒美はなしだぞ」  担任が声を張り上げる。その先にいるのは高幡順平で、二人が意味深なアイコンタクトを取っているように見える。  自分の派手になった顔が原因かなと思ったところで、担任は俺の方にもちらりと視線を向けた。……当たりのようだ。 「でもさ、一人も欠けないってかなり厳しいぜ」  高幡順平の取り巻きの一人からそんな声が上げると、騒ぎはあっという間に沈静化した。  俺は聞こえない振りをして視線を外に向ける。 「居るのか居ないのか分からないような奴が、このクラスにはいるんだからさ」  教室内が静まり返った。
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