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世の中のすべてが嫌いだ。
全部つまんねえ。
全部、腐っちまえ。
俺は何も期待しない。何も望まない。あるのは虚無感だけ。
正義なんて信じない。
愛や友情なんてもっと信じない。
テキトーに生きてたって死ぬことはないんだ。
無駄に笑ったり、泣いたりなんて、面倒くさいだけ―――。
空っぽの心で外を眺めていると、教室の騒がしい音が耳障りだった。
あっちでも、こっちでも、馬鹿が高笑いを上げている。徒党を組まなきゃ生きられない奴らがぺちゃくちゃとよく喋り、よく笑う。
何が楽しいんだか、俺には分からない。
この中でいったいどれだけの奴が本音で生きているんだろう。どいつもこいつも仮面を被っているようにしか見えなかった。
耳を塞ぐものがない。休み時間が終わるまで耐えられそうになかった。
遅刻して教室に入り、一時間さえまともに授業を受けていないけれど、どうでもよくなる。
椅子から立ち上がり教室の後ろのドアを引いたとき、横から嫌な声が飛んできた。
「あっれー。樋口、もう帰んの?」
名前を呼ばれて聞こえない振りは出来なかった。
間延びした声の主を見ると、下卑た笑みを貼り付けてこちらを見ている。からかいを含んだ言い方に、女子が「やめなよ~」なんて言ってるが、その声さえ笑っていた。
ドアを思いっきり蹴飛ばしたくなる。我慢してにやけた男の顔を一瞥し、教室を出た。
ドアにはめ込まれたガラスが割れんばかりの力で引き戸を閉める。教室にいる者たちがどれだけ驚こうが知ったことでは無い。馬鹿笑いが吹き飛んだかと思うと清々した。
苛々する。
あの顔。あの声。
嫌いだ。嫌いだ。
世界で一番大っ嫌い。
同じクラスの高幡順平が、俺は死ぬほど嫌いだった。
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