7/18
前へ
/575ページ
次へ
 このクラスはお祭り騒ぎがしたいのか、単なる目立ちたがり屋のスタンドプレイに振り回されているのか、よく分からない。どちらでもいいけれど、人のことを話の折り合いに出さないでほしい。それとも異端者は目障りだから排除したいのだろうか。わざわざ主張しなくても、始めから俺をカウントしなければいいのに。 「全員はリスクが高いよ。35人ならまだいいけど」 「しかしなあ、このクラスの名簿は36人だし、現に今は36人揃ってるんだが……」  担任は今までと変わらない調子で非難する生徒を宥めた。 「35人でいる時間の方が長いと思います」  別の声が上がる。担任の大きな溜息が後ろの席まで聞こえるようだった。 「俺に任せろ!」  教室の重い空気を吹き飛ばしたのは高幡順平だ。  教室の中央で急に立ち上がり、自信に満ちた笑顔を振り巻く。 「どの行事でも全員参加ができないクラスだったけど、俺がいるからもう大丈夫。先生、安心して!」 「……お前は元々このクラスに居るだろ。突然降って湧いたような言い方をするな」  高幡順平は自分の語弊に気付かず、周囲の失笑を買っていた。 「違うよ先生! 俺、先生に言われなくても樋口の過ごしやすいスクールライフを考えて……」  担任がつかつかと高幡順平に歩み寄り、まだ話している途中の奴の頭を手に持っていた名簿帳で軽く叩いた。  ……何をやっているんだが。奴らの策略は呆気なくボロを出した。  まったく、いい迷惑だ。やる気がない、協調性がない生徒なんて先生も放っておけばいいのに、よりにもよって高幡順平を担ぎ出すなんて逆効果だ。 「イタイな。叩かなくてもいいじゃん。先生、俺のことを全然信用してないでしょ」 「お前な。秘訣があるとか言って、何もしていないのは知っているんだからな」 「しょうがないじゃん。家電もケー番もメアドも知らなかったんだもん。でももうゲットしたから大丈夫」 「なにが大丈夫だ。そのことはもういい。席につきなさい」  担任は高幡順平をあしらい、朝礼を終わらせようとした。
/575ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2311人が本棚に入れています
本棚に追加