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 一限目が終わった。老年教師の挨拶を待たずに背伸びをしたり、立ち上がったりする者がいる。  プリントで埋め尽くされそうな机の中に置きっぱなしの教科書を突っ込み、俺も早々に立ち上がった。  休み時間を見計らったように携帯が震える。朝、何人かに送ったメールの返信が届いた。  俺と同じサボり魔の女が家にいるから来るか、という内容。避難できるならどこでもよかった。すぐに返事を打ち始めたとき、携帯に落ちる影が濃くなった。  あっと思った瞬間には、顔を挟むように二本の腕が伸びてきて、窓に追いつめられる。 「それ、俺にメールを打ってるの?」  携帯を覗き込もうとする高幡順平の顔が近い。身体を引いた拍子に後頭部を勢いよく窓ガラスに打ちつけた。 「っ、……」 「これ、俺のアドレスじゃない……」  高幡順平は俺の手首を掴み、携帯の画面を堂々と盗み見て顔を曇らせる。  腕を引き、携帯をズボンのポケットに隠した。するとどうしたことか、高幡順平は俺のズボンから携帯を抜き取ってしまう。 「何すんだ!」  高幡順平は俺より身長が15センチ以上高く、それが頭上に腕を伸ばすと俺は背伸びをしてもジャンプをしても届かない。 「この機種は使ったことが無いから分からないんだよな。ねえ、俺にメールしてよ」  なんでだっ!   「返せ!」  取り返すのに必死になって高幡順平のシャツにしがみついていた。高幡順平がふいに視線を下げるから、目の位置の近さに驚き、思わず手を離してしまう。
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