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翌朝、家に帰ると知らない男が我が者顔でテレビの前に寝転んでいた。……まあ、よくあることだ。
母親の姿は見えず、何も見なかったように家を出た。
学校に行きたくない。
通学路を歩くとき、いつもそう思う。勉強や集団行動が嫌いな俺にとって学校は憂鬱な場所でしかない。
出しゃばるつもりは毛頭ないのに、いつの時代も異端者は浮く。周りと違う行動を取るだけで目立つ、非難される、後ろ指をさされる。嫌なら皆と同じ行動しろという話だが、周りと足並みを揃え、空気を読んで行動するのが、陰口を叩かれるより嫌だった。
周りは俺を腫れ物のように扱い、敬遠する。コソコソと盗み見され、難癖や良からぬ理由で噂されるのも慣れっこだ。しかし今日は少し違った。
俺が通学路を歩くだけで周りの生徒たちがジロジロと不躾な視線を向けてくる。しかも、大半の女子がクスクスと笑っているように見えた。こんなのは初めてで気持ちが悪い。いつもは見て見ぬふりをする俺もさすがに気になり始めた。
校門を通過したところで後ろから肩を叩かれた。同じ学年の男子生徒だが知らない顔だ。原色に近いオレンジ色の髪、人を見下したように口元を歪めていて、いかにも不良とい言葉が似合いそうだ。
「よー、樋口。調子はどうだ?」
男は白い歯を見せて笑った。馴れ馴れしい態度も胡散臭い。
「あれ、俺のこと覚えてない?」
警戒されていると気付いた男は首を捻った。
覚えているも何も初めから知らない。
無言で睨みつけると、男は大袈裟に落胆する。
「春日が樋口をボコっているところに俺もいたんだけどなー」
親しげな態度に騙されてはいけない。男は敵だった。
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