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一人の女に縛られない俺は、次の日には別の女と腕を組む。学校とは真逆の方に進んで、今日は女子高のお嬢様を誘い出した。
制服のままなのに昼間からデートみたいなことをする。それがお嬢様の要望だったから嫌々な心は隠して付き合った。
「瑠珂の学校に『高幡順平』くんっているでしょう。知ってる?」
突然お嬢様がそんなことを言い出す。
ハ? 何を言いだしちゃんてんの、こいつ。
名前を聞いただけでイラっとする俺は、我慢できずに顔に出ていた。
「瑠珂どうしたの? 顔が怖いよ」
「……別に。そいつが何?」
不機嫌丸出しで聞き返したのに、俺が高幡順平を嫌いだと知らないお嬢様はにこやかに話しを続ける。
「友達がね、彼のことが気になるみたいなの。もし瑠珂が知っているなら紹介してもらえないかと思って」
知ってるも何も同じクラスだっつうの。そして世界で一番嫌いだ。
正直に言ったら、さすがのお嬢様もぶったまげるだろうから言わない。
「へえ……」
興味のない相槌を打つが、天真爛漫なお嬢様は気にならないらしい。
「写真を見たのよ。彼、背が高くてかっこいいのね。目立つから写真を見たら瑠珂もすぐ分かるわ」
何も知らずに笑顔を浮かべる女が無性に腹立たしくなってきた。
あいつの話をいつまで続ける気だろう。写真まで取り出すんじゃないだろうな。冗談じゃないぞ。
「キャッ!」
あれ………。
気付いた時には繋いでいた手を振り払い、彼女を地面に転がしていた。尻もちをついたお嬢様は手首を押さえ、怯えた目でこちらを見る。
「ごめん……」
すぐに手を引いて立たせるが、お嬢様の強張りはそう簡単に解けそうにない。
仕方がない……。
「知ってるよ。でも俺、そいつのことが嫌いなんだ。ごめんな……」
気まずい雰囲気になってしまったが、お嬢様は必死に首を振って許してくれた。
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