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生徒が帰宅した時間帯を見計らって伊藤に会いに行った。伊藤と話が終わった後、何故か宮古に呼び止められてつまらない話に付き合わされた。ようやく解放されて帰ろうとした時、今度は瑠珂が現れた。瑠珂は伊藤に渡したはずの退学願を持っていて、それをいきなりビリビリに引き裂き、俺の胸倉を掴んで怒鳴りつけてきた。
めっちゃ怖くて悲しかったんだ。その気持ちを伝えようと思うのに、話を聞く四人の様子がおかしい。西尾には再び軽蔑の目を向けられ、春日は口を半開きにしており、マイはホラー映画にでも出演できそうなくらい蒼白になっていた。唯一サクラは表情を変えていなかったが、顎に手を当てて意味深な発言をする。
「昨日の樋口は照れてたんじゃなくて落ち込んでたのか?」
瑠珂が、落ち込む?
首を傾けると、西尾にギロリと睨まれた。
「順平、お前樋口に復学することを話したのか?」
復学という選択肢が生まれたのは昨日瑠珂と別れた後だ。連絡手段は無いし、今日の瑠珂はサッサとバイトに行っちゃうし、伝えられるはずが無い。
俺が「いいや」と首を振ると、今度は春日が神妙な面持ちで言った。
「アイツはまだ順平が退学すると思ってるんじゃないのか?」
俺は頷く。誰からも伝わってなければ、そうだろうな。
突き合せた面々がサッと青ざめた。
机をドンと叩いたのは西尾だ。
「返事が来ないとか言ってないで、復学することを早く樋口に伝えろっ!」
いきなり怒鳴られてビックリした。
するとマイが「そうだよ。早く伝えてあげて!」と涙目で訴えてくる。
俺は勢いに押され、訳が分からないまま携帯電話を手に取った。その時、新しいメールが届いた。フォルダを開いた瞬間にガッツポーズが出る。
「キター! 瑠珂からメールの返事が来た!」
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