瑠珂と順平のその後①

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 復学することを瑠珂にメールで伝えると、返ってきた反応は「そうか」の一言だけだった―――。  傘の先からぽたぽたと滴が落ちる。雨だ。冬の雨は冷たくて、一人で佇んでいると寂しさと不安が増す。この数日は友人らに囲まれて賑やかな時間を過ごしていたから余計にそう感じるのかもしれない。  誘われるまま連日遊び耽った。そうすれば瑠珂のことばかり考えなくてすむと思ったけれど、逆だった。懐かしがって喜ぶ声が多い一方で、疑惑の真相を探る者、聞いてもいないのに瑠珂の近況を語り出す者、同性に惚れたことを嗤う者や忌み嫌う者、色々な意見を耳にしてその都度悩まされた。  サクラは「考えすぎるな」と言った。「好きなようにやればいい」と簡単に言う。好きにやって一度失敗した俺としては受け入れにくいアドバイスだ。  春日は「焦る必要はない」と言った。励ましてくれているのかと思いきや、半分はそうで半分は違った。「樋口が考えてることなんて俺達にも分からねえよ。たださ、女の方から寄ってくるのに誰とも付き合わず興味すら見せない。一途な男前に夢を抱く女は増えるし、男のやっかみと中傷は増える一方だし……」と溜息を零した。  西尾は「中途半端な考えで樋口に近付くな」と言った。しつこいくらい「お前は大丈夫なのか?」と聞いてくるのは、俺じゃなくて瑠珂を心配しているみたいだ。信用してもらうために俺はキレない、苛々しない、八つ当たりしないの三原則を宣誓したが、西尾には「呆れ過ぎて怒る気力も失せる」と冷たくあしらわれた。西尾のやつ、何を怒っているんだ。再会してからやけに刺々しい。不満をぶつつけると西尾は強烈なカウンターパンチを返してきた。「怒ってるよ。本当はお前を一発ぶん殴りたいくらい怒ってる。俺だけじゃない、サクラや春日や他の奴らだって同じ気持ちだと思う。でも口や態度には出さずにいるんだ。だって樋口が怒らないのに俺達が怒ったって仕方ないじゃないか」。
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