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あと30分って、確認したところで門から人が出てきた。瑠珂だ。目が合って互いにビックリする。
「早いな……」
「瑠珂こそ」
苦笑が零れた。すると瑠珂はムッと顔を顰める。あれ? 俺の態度や言葉にまずい所があっただろうか。
なんとなく気まずい雰囲気になり話しが続かない。
タタン、タタン、と雨粒が傘の表面を弾く。瑠珂の傘にも水滴がたくさん付いていて、一つまた一つと流れ落ちた。
今日の瑠珂はブレザーの上に厚手の黒いパーカーを羽織っており、ちゃんと防寒できているから安心だ。この前は北風が吹き荒れるなかブレザーだけだったから見てるこっちが凍えそうだったんだ。
しかし、いつまでも門の前で突っ立っているわけにはいかない。
「これからどうする?」
わざとらしく辺りを見渡してから問いかけた。瑠珂は濡れた地面を見つめたまま小さく口を開く。
「お前んちは?」
「………」
「ダメなの?」
瑠珂が上目遣いで俺をじっと見つめてくる。その目がどことなく儚げで頼りなく、思わず息を呑んだ。
「いや……。いいよ」
しまった。見入るあまり反応が遅れた。
瑠珂は顎を引き、再び地面に視線を落とした。
階段の方へ足を向ける瑠珂に、「そっちは近道だけど雨の日は滑るよ」と教えてやる。瑠珂は「ゆっくり行けば大丈夫だろ」と言うだけで振り返らない。
二人とも傘をさしているので否応なく歩く間隔に微妙な距離ができてしまう。もどかしい。色々と聞きたい事があるのに瑠珂の背中は静かで、話しかけづらい。
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