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洗面所からタオルを取って戻ると、玄関に瑠珂の姿はなかった。リビングを覗いてみたが見つからない。玄関には瑠珂の靴が揃えてある。まさかと思いながら階段を駆け上がると、自室のドアが大きく開いていた。
「悪い。入っちゃまずかったか?」
そんなふうに言いながら瑠珂はちっとも悪びれた様子を見せない。俺の方が唖然としてしまった。
初めて瑠珂がうちに泊まった夜、警戒して2階に上がりたがらなかったのに……。なんて以前のことを思い出して苦笑する。
「いや、構わないよ」
部屋に入ってドアを閉めようとしたけど、途中で止めた。閉ざされた空間に二人きりなるのが怖かった。
「それ、ハンガーにかけるよ」
瑠珂にタオルを渡し、脱いだパーカーと靴下を取り上げる。やっぱり、瑠珂の靴下はくるぶし辺りが少し濡れているだけだった。
自分のコートもハンガーに吊す。エアコンのリモコンを探すと、瑠珂はソファの傍らに佇んで部屋の中を見渡していた。玄関では何も感じなかったのに、ここが寝起きを繰り返し寛ぐ部屋だからだろうか、細い背中や肩や首筋が近くてムラムラしてきた。
ダメだ。近付いたら、少しでも触れてしまったら、止まらなくなる。頭では抑制するのに、身体は言うことを聞いてくれない。俺は瑠珂を後ろから抱き締めていた。
「ごめん……」
すぐに離れるから。ほんの少しでいいから。
湿った髪や、服や、肌から瑠珂の匂いがして目眩がしそうだった。
1年前より瑠珂の身長は少し伸びていて、肩幅も胸板も大きくなった感じがする。
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