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あと少しで予鈴が鳴り、昼休みが終わろうとする頃。
旧校舎の誰もいない、誰も寄りつかない物理室のベランダで校庭を眺めていたら、珍しくドアが開いた。
今は使われなくなった教室に来る奴なんて冴えない物理教師ぐらいだと思っていたけれど、多すぎる人影を認めて緊張が走る。
見慣れた面々が並ぶのは、俺とは別の意味で目立つ奴らだから。ざっと10人ぐらいはいそうだ。向けられた視線はどれも冷たい。
あー、またか……。なんて肩を落とす俺に、先頭に立って厳つい顔をした奴が言った。
「樋口、面かせ」
ビンゴ。この状況はそれしかないよね。
こういうことに慣れている俺は、逃げるという選択肢を持っていた。別に囲まれているわけじゃない。教室には奴らが入ってきたのとは別にもう一つドアがある。それに今いる場所は2階だからその気になればベランダから飛び降りられなくもない。
観念したように見せかけて逃げるタイミングを見計らっていたが、最後に教室に入ってきた者を見て俺の思考は停止した。
高幡順平―――。
奴だけは俺を見て笑った。
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