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乾いた空気に空の青さがよく映える。雲一つ無い快晴だった。
指定された芝生の上で胡座を組んで座っていると、購買に寄っていた高幡順平が遅れて到着した。となりに並んで座り、鼻歌交じりに袋の中からパンと飲み物を取り出す。
「はい、これ瑠珂のね。これでいい?」
「うん」
焼きそばパンとカスタードクリームたっぷりのコッペパン。事前に希望したどおりのものが高幡順平から手渡された。
購買部の焼きそばパンはとても人気だから競争率が高く、昼休みをフライングしたときしか買えない。四限目をしっかりと最後まで受け、のろのろと動きだした高幡順平がこいつをどうやって手に入れたのかは謎である。
高幡順平はお茶のペットボトルを一つ開けた。食後にコーラを飲みたがる俺と、コーヒーを飲みたがる高幡順平は、食事中は500ミリリットルのお茶を回し飲みするのが日常になりつつある。
パンを持っていない左手を芝生につけ、高幡順平はリラックスした状態でパンを咀嚼している。傾斜の土手だったら今にも寝転んでしまいそうだ。
背の低い植木の向こう側はグラウンドで、昼休みがはじまって間もないというのに早くも男子が集まって野球をはじめようとしていた。学年は同じでもクラスはばらばらで、その中に甲高い声の西尾を見つける。
「体育でもやったのにまた野球をするのか」
「好きだからな、西尾は」
呆れる俺に対し、高幡順平は「まあまあ」と宥めるように笑った。
「アイツは小学校のときにリトルリーグで、中学は野球部だから」
「今は?」
「帰宅部。遊びでやってるぐらいが楽しいんだろ」
「ふ~ん」
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