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 男達が順番を決めるためにじゃんけんを始めた。  青空を仰いで寝転んでいる場合じゃないのに、俺の体は起き上がることも、顔を背けることもできずにいる。  自分の無力さが悔しい。できる事ならすぐにでもここから逃げ出したかった。  ぼやけた視界の中に春日ではない誰かの影が落ちた。そいつは俺の頭の横にしゃがみ込むと、顔や首についた砂を払い始めた。  この状況で優しくされても気持ち悪いだけ。感謝なんて微塵も起きない。それに顔に当たる手が思いのほか乱暴で、どちらかと言うと触らないで欲しい。 「っ、……」 「なんだ。クラスメイトのよしみで同情か? 似合わねえ」  春日の嫌味の後、頭上からクスリと笑みが落ちた。  クラスメイトのよしみということは、この場には高幡順平以外にない。  動かないと思っていた四肢が動き、高幡順平から距離を取るため藻掻き始める。無様に地面を這ってもいい。そのぐらい嫌だった。  しかし身体中が痛くて起き上がれない俺にできるのは些細な悪足掻きだけ。高幡順平にあっさり捕まり、押さえ付けられる。 「なんだよ、順平。じゃんけんに参加しないのに先に手を出すなよ」  仲間から非難が飛んでくる。それでも高幡順平は俺から離れる気配はなく、クツクツと喉を鳴らした。 「犯されたぐらいで樋口の女癖が直るはず無いじゃん」  のんびりした独特のイントネーションは教室にいる時と変わらない。どこに居ても誰と居ても、奴はマイペースで自分を崩さない。自分を偽る必要が無い。  高幡順平が俺の嫌いな顔で笑っているのが容易に想像できた。 「どういう意味だ? 言い出したのはお前だろ」 「犯すなんて一言も言ってないよ」  春日から厳しく指摘されても、高幡順平は飄々としている。  片腕を捻られたまま、今度はこめかみに付いた砂を払われた。 「痛っ。ヤ、……やめ、」 「樋口の悪行を直すには痛めつける以外にもっと有効な方法があるよ」  そんなのはどうでもいい。どこから降ってくるのか、いつまで続くのか分からない乱暴な手を止めて欲しかった。  殴られたところ、擦り切れたところ、関係なく叩くのはやめてくれ。
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