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「私今日、空港で貴方が出てくる時、てっきり女装でもしてると思ってた」
そう言うと慶吾は不思議そうに私を見る。
「どうして?」
と聞いた。
「だって、男が好きって、
女に興味が無いって言ってたし・・」
「いつ?僕が?」
私がブラの話をすると、慶吾は私を覗くように見て笑う。
「ああ、あれ、あれは嘘」
「嘘?どうして?」
慶吾は思い出すようにまた笑う。
「だって、二人きりの部屋で君の乳首を見ちゃったんだよ。
あの時僕はまだ15歳で、
君に何て言っていいか分からなくて、思わずああ言っちゃったんだ」
「嘘・・・だって、
私の胸に素手で・・」
「うん、あれは」
「あれは何よ?」
「触りたくて・・
だってほら、綺麗なピンク色してたから。
だけど普通には触れないだろ?」
私は驚きすぎて言葉が出ない。
彼が急に私を覘く。
「でも・・
嫌な事がある度にあの時の君の顔を思い出したよ。
そしてあの時の手の中の君の乳房の感覚も・・・
本当は押し倒してキスしたかったけど、勢いで男が好きって言っちゃったし・・
君もホモかって聞くから何もできなくなっちゃったんだ」
彼は私を見つめる。
「奈々美、本当はさ・・
君を抱きたくて帰って来たんだ。
どう?僕と寝ない?」
「嘘、慶吾、
私が好きだったの?」
「判らない」
「え?」
「好きだったかは判らない。
でも、今は好きだ。
空港で僕を待ってる君を見つけた時、胸がドキドキしたんだ。
そして思い出した。
修学旅行の日、君が休んだと聞いて僕も旅行をやめた事」
私は慶吾を見つめた。
胸が音を発てて私に聞く、
この人が今も好きなの?って
「気持ち・・
決まったら上っておいでよ。
僕は部屋で待ってる」
そう言うとカードキイを一枚私の手に渡した。
「もう一杯飲むだろう?」
そう聞いて私の為にカクテルを頼んでから、部屋に戻って行った。
(どうしよう。
ずるい・・
私に決めさせるなんて・・
私を抱く為に20年ぶりに日本に戻って来たですって?
嘘に決まってる。
慶吾は昔から冗談ばかり言って私をからかって笑った。
今だって部屋に入った途端嘘だと言って笑うかも知れない。
そうだ、きっと笑いものにするんだ)
そう自分に言い訳をして彼の部屋に向った。
心はもう決まっていた。
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