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「ん?そうだな・・
寒いだけだから?」
彼は半分茶化すように答えた。
「はあ?寒い・・
じゃ、教科書とかはどうするの?」
「ああ~、
それが有ったな・・
忘れてた・・
丁度いいや君持って来てよ」
「えっ?
持って来てってどうやって?
家だって知らないし・・
貴方の名前も知らないのよ」
慌てる私の顔を覗き込む。
「大丈夫だ。
君の家2丁目の角の家だろ。
大きな柿の木のある」
「そうだけど・・
何で知ってるの?」
「僕の家、君の家から直ぐだもん。
後で取りに行くよ」
そう言うと本当に帰ってしまった。
呆れながら彼の後ろ姿を見ていると、母が彼と入れ違う様に校門を入って来て私を見つけた。
「奈々ちゃんごめんね、
クラスは見つけられた?」
「うん、3組だった」
「そう、早く入りましょう、式が始まっちゃう」
母に急かされて中に入り掛けた。
「あっ」
「どうしたの?」
母が私を見る。
「あの子の名前聞き忘れた」
それが慶吾との出会い・・
あの日は結局重たい教科書を二人分持ち帰って彼が来るのを待った。
だが、彼がそれを取りに来たのは一週間もたってからだった。
子供の頃から変った人だった。
2年になってクラス換えで一度は別のクラスになったが3年になってまた同じクラスになった。
中学位の男子はものすごく成長する。
1年の時とは丸で違い、声も変り、背も私より遥かに高くなっていた。
でも女のように美しい顔だけは変らなかったけれど。
それに比べ女子は・・
いや、私はたいして成長しなかった。
3年の夏まで生理も無くて胸もAカップ以下。
二つ年下妹はもう生理もあって胸もBカップだと言うのに。
その夏、
修学旅行を目前に私は初潮を迎えた。
母に言われ楽しみにしていた修学旅行を諦めた。
出血も多かったし、お腹も痛かった。
もし旅館でシーツを汚す事にでもなれば恥かしい思いをするからと言われたからだ。
それでもやっぱり行きたかった。
一人だけ取り残された気がした。
それだけではない。
私の修学旅行に合わせて予定されていた家族旅行が取りやめにになると言うと、妹が物凄い抗議に出た。
結局妹に泣き附かれ、私一人が家に残る事になった。
それも3日間も・・
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