突然は必然?

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私の胸に素手で触れて何の興味も示さない。 そんな男に初めての恋心を震わせてしまった。 それなのにその冬、卒業も待たずに彼は突然アメリカに留学してそれっきり、今朝の電話までなんの連絡もなかった。 その慶吾が私に会いたいと言った。 20年ぶりに・・ 翌日の午後、 到着ロビーで彼を待った。 今朝は珍しく早くに目が覚めた。 慶吾の顔を思い出す。 胸がドキドキと音を発てる。 16時30分到着のエール、フランスの便・・・ 私は自分の着ている服を見直す。 ブランドものでは無いけれどそれなりにお洒落な物を選んだ心算だ。 こう見えてもブティックを2店舗経営するオーナーだ。 服を選ぶセンス位あると思ってる。 高校を卒業後、アパレルメーカーに8年勤めた。 外回りが主な仕事でブティックに品物を卸したり、トレンドのリサーチをしたりしていた。 殆どが女性と言う職場は生存競争も激しかった。 同僚には男性もいるには居たが、半分位は女性に興味の無い人種だった。 彼等は女性の心を持ちながら、男性の感性も持ち合わせている。 この仕事には打って付だ。 とても私では敵わないと悟って独立をした。 初めは小さな店を自分でやっていたが、三年前に思い切って2件目をオープンし若い店長を立てて店を任せた。 父が急に亡くなり、母や妹の生活を支える為もあったが、 今どきのトレンドについて行けないと思ったからだ。 今は2軒の店を周り接客のプロセスを見るだけだ。 昼過ぎに店に出て夜は業者やデザイナーと飲みに行く。 まあ、言ってみれば接待役のようなものだ。 こんなふうに此れから先も生きて行くのだろうと思っていた。 4時30分に着くはずの慶吾がまだ出て来ない。 きっと妖艶な女性のようになって出てくるものと目を凝らして探す。 髪なんか金色にしてたりして・・ そんな事を思ってロビーへ出てくる人の波を見つめた。 急に肩を叩かれて振り向く。 「なにボケーっとしてんの?お帰り位言ってよ」 私は驚いて相手を見た。 黒のパンツに薄手のVネックのサマーセーターを素肌に着て、サングラスをした背の高い男性が立っていた。 「慶・・吾?」 「他に誰を待ってるの?」 彼は笑いながら私を抱きしめた。 「うん綺麗になった。 胸もCカップ位かな?」 「ちょっと、やめてよ大きな声で・・」 てっきり女装した彼が来ると思っていたので言葉に詰まった。
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