大魔王のフィアンセ

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今年は天候がおかしい。 三月に春の様に暖かいと思ったら四月の終わりに雪が降った。 東京は雪に弱い。 大雪とは言えないのに交通は乱れに乱れ、車が道に溢れた。 「こんな日に事務所から呼び出しなんて」 優子は何となく嫌な気がした。 ドラマの収録も遅れ中目黒の事務所に着いたのは約束より三時間ほど後だった。 入り口のドアには、 (ワールドアクターズプロ) のプレートが架けられている。 三年前韓国から帰って来てからはこの事務所の所属になった。 韓国では二年間それなりにドラマや映画には出演したが主役にはなれなかった。 いつも『日本人』が付いて廻った。 帰国後も殆どが脇役だったが、CM出演など4、5本を含めると年収はそこそこ有ったし事務所への貢献もしているつもりだった。 社長室に入ると珍しく社長の中井が机にむかっていた。 (雪で帰宅できないのかしら? いつもは早く帰りたい人なのに) 遅くなった事を詫びてその前に立った。 「実は来月の契約更新だけど、事務所としては少し考えたいと思っているんだ。 君は実力もあって人気もない訳じゃないが、今の日本のドラマじゃ君に合った役がなかなか無い。 もっと世界に目を向けたらどうかな」 そう言うと煙草に火を点けた。
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