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たしかに年齢的に演じられる役はそう多くはなかった。
「とにかく考えておいてくれ」
そのひと言で話は終わり優子は事務所を後にした。
マンションへ帰ると通帳を取り出した。
一年や二年仕事が無くてもやっていけるだけの残高はある。
個人事務所を作って一人立ちする事も出来ない訳ではなかったがなんだか力がぬけて先の事を考える気力が無かった。
カーテンを開け夜の明かりに浮かぶ雪を見ていた。
「なんだろう?
報われない?
ん~違うな。
運が無い。
それも違うな。
この仕事に向いてないのかな?」
そう呟いた。
携帯が鳴った。
京都の母からだった。
「優ちゃん、ユニさんが入院したらしいの」
韓国の病院にいると人伝てに連絡があったと言った。
ユニは身体の弱かった母に代わり優子を育ててくれた人だった。
日本画家の父の弟子として来日していた彼女は、実家の決めた男性と結婚する為一度韓国へ帰ったが、子供を失くして日本に戻り優子の世話をする事になった。
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