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産後の日立ちが悪く寝たきりの実母に代わり、優子が小学校に入るまでの7年間、ずっと傍にいてくれたもう一人の母だった。
幼い頃から実母とユニに可愛がられ韓国語も日本語もごちゃ混ぜに覚えた。
韓国で女優をしていた時も、言わなければ日本人だと気付かれた事さえ無かった語学力はそのお蔭だった。
そのユニが癌で入院してると言うのだ。
「ママ、今のドラマの収録が終わったら私韓国に行ってくる。
しばらく日本に帰らなくてもいい?」
「あたりまえじゃない。
ママに遠慮なんて要らない。
ママにとってもユニさんは姉妹みたいな人よ、あなたが傍に居てくれたら少しは安心できる」
そう言ってくれた。
電話を切ると古い電話帳を開いて韓国時代の優子のマネージャだったキム、ボウムに電話を入れた。
「久しぶり、どうしたの?
僕に逢いたくて韓国に戻るの?」
彼はいつも明るくて楽しい男性だった。
今は芸能界を引いて実家を継いでいると聞いていた。
「戻るわけじゃないんだけど、暫く韓国にいるつもりなの。
住む所と仕事が欲しいんだけど」
少し間を置いて続ける。
「女優じゃなくていいわ。
定時に終わるかフレックスみたいな仕事がいい。
病人の世話があるの。
時間が自由に使える仕事がいいんだけど」
彼の方も少し間をおく。
「優子独身のまま?」
と聞いてきた。
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