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「そうだけど何故?」
「実は僕の知り合いに婚約者を探している人がいるんだ。
とは言っても偽者でいい。
パーティや外出の時に一緒にいて彼女のふりをしていればいい。
住むのも彼の家に別の部屋を用意してくれるし、生活費もかからない。
期間は一年。
一年したら婚約解消だそうだ。
どう?
だけど他にも候補が5、6人いるから一応書類選考があるらしいんだ。
優子さえ良かったら君がこっちにいた時のデータで書類だけ出しておくよ。
返事は急ぐよ。
2、3日のうちにしてくれるとありがたい」
所属事務所との更新ができない今、日本に帰った後も仕事があるという保障は無い。
偽者の婚約者と言う怪しげなフレーズに少し迷ったが、とにかく今の自分には良い条件だ。
一年は少し長い気がしたがユニの病状も分らない今、正直通帳残高を減らす事の無いこの話は魅力的にさえ思えた。
「分った、お願いするわ」
ボウムにそう言って携帯を置いた。
他の人に決まった時の為に別の仕事もあたっておくよと言う優しい言葉に癒される。
窓の外に降り積もる雪を眺めながら「この部屋も出なくちゃね」
そう呟いた。
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