選ばれた封筒

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学生の頃、女癖の悪い父に反抗し家を出て一人で暮らした時期があった。 生活費もアルバイトですべて賄って何一つ不満に思う事は無かったが、好きな女性ができてデートをする時だけ金がない事が不便だと思えた。 行きたいと言う所へも連れて行けず、プレゼントも高価な物は買えなかった。 それでも自分の為に食事の支度や部屋の掃除をしてくれる彼女との結婚を考えて指輪を買った日に別れを告げられた。 問い詰めると財閥の跡取りとの見合いの末結婚が決まったと言った。 せめて嫌いになったと言えば許せたものをと思った。 それ以来女性と付き合った事は無い。 今なら僕を選んだのだろうと思う。 でもそれは愛じゃない。 利害だ。 もともと本当に彼女が僕を愛していたのかさえ分らない。 愛なんて信じられないと思った。 仕事は楽しい、計算道理に事が運ぶ。 今の自分に手に入らぬものは無い気がしだ。
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