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いつ誰が植えたのか。いつから咲いているのかはわからぬが、ススキ野を抜けた先には天上に咲く花のように見るものの魂を揺さぶり魅了をする花が咲いている。花弁のひとつひとつは柔らかく天女の羽衣ようだ。放たれるかおりは、香にして身にまとえば時の賢帝さえも愚帝に変えてしまえるほど忘れがたい。私はその花が視界の端にうつりこんだだけで魅了されてしまっていた。
手折り持ち帰るには身に余るほどの尊さで、時間の許す限り花を主君とあがめ奉り近侍の如くそばに控える日々を送った。
「ススキ野の奥にはゆかぬ方がいいぞ。あの地は人を食う」
日課のように花のもとに通っていた私に対し、幾年の星霜を里で過ごした老人から警鐘を告げられた。
「あの地には言葉に形容できぬほど綺麗な花があるだけで他にも何もありませんが、一体何が危険だというのです」
「さぁな、ワシも詳しくは知らぬ。神隠しにでもあったのか誰も戻ってこんのだ」
「私は何事もなく、戻ってこられております」
「明日が等しくくるとは限らぬ。命が惜しくば、これ以上近づかないことだ。」
老人はカッカッカッと笑い杖をつきながらどこかへといってしまわれた。
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