メビウス

10/20
前へ
/20ページ
次へ
(高志さん……! 早く……怖い怖い怖い……)  ガタッ! と突然リビングの壁が戦慄いた。 「……っ!!」  目を見開き、部屋の空間を凝視した瞬間、今度は天井がミシミシと軋む。 「ひっ……!」  続いてドタドタと天井裏で何かが走り回るような音。  ネズミどころではないその大きな振動に、部屋の天井から埃が落ちてくる。  いや、埃どころではない。照明器具まで落ちてきそうなほどドスドスガタガタと震える天井。 「なにっ……? なんなのこれ、一体……! きゃあああ!」  その時、天井裏から聞き覚えのある怒声が降ってきた。 『こいつ、暴れんじゃねえ! おとなしくしろ!』 (えっ……?)  依子は天井を食い入るように見つめ、その奥の喧騒に耳を澄ませる。 『待機しててもらった警察がすぐ来てくれるそうです!』 『よし、足を押さえてくれ! 下に引きずり下ろすぞ!』 (高志……さん?)  何が何だかわからない。  天井裏から聞こえてくるのは紛れもなく高志と、そして知らない男の声。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加