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ずるずると何かを引っ張るような音と、時折まだバタバタと足を踏み鳴らすような音が天井を通り過ぎていく。
部屋の隅で硬直していると、ほどなくして赤い点滅灯が窓に映り込んだ。
依子は窓に飛びつき、カーテンを少しだけ上げて外を覗き見る。
(パトカー……!)
サイレンこそ鳴らしてはいないが、警察車両が眼下で停車した。そこから数名の警官が出て来てこのアパートに走り込んでいく。
階段を駆け上り、二階に近づいて来る足音。
その音は依子の部屋ではなく、別の部屋のドアを開ける音と重なった。
(どういうコト……? いったい何が起きてるの)
『とりあえず事情は署で××××。証拠物品を押収……××……!』
『現行犯……××。すみませんがあなたも……××××……』
数人の男達の声が飛び交い、耳を澄ませるけれど全部はよく聞き取れない。
喧噪がだんだん遠のいていき、依子は再び窓から下を見下ろした。
二人の警官に挟まれた小柄な男が、有無を言わさずパトカーに押し込められている。
(誰……? どこかで見たような……)
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