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その時だった。
依子の部屋の鍵が乱暴にガシャン! と開き、血相を変えた高志が飛び込んで来た。
「──依子!」
「高志さんっ!」
依子はもつれる足で駆け寄って高志に抱きついた。
彼の体温を感じてやっと現実が戻って来たような気がする。
「囮みたいな真似をさせて悪かった……怖かっただろう。でもこういうのは現行犯じゃないとダメらしくて。でももう大丈夫だ」
「私……何が何だか。高志さん……!」
高志は腕を緩め、真剣な眼差しで依子を見下ろした。
「さっき依子が電話で言ってた、ネットで見つけた事件ってのはこれだろう?」
高志がジャケットの懐から一枚のコピー用紙を取り出す。
訝りながらそれを受け取って、依子は目を走らせた。
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平成〇年3月6日午後11時頃、都内会社員、遠山 順子さん(当時21歳)が自宅の黒田区北本町2丁目のアパートにて、カッターナイフで滅多刺しにされた。…………
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