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「……え、なに? 帰っちゃうの?」
「明日は早いんだ。ここから出勤すると遠いから」
依子は毛布を引き上げながら、そそくさと着替えをする高志に向かって頬を膨らませてみせた。
「そんな顔すんなよ。可愛いけど」
「だって……怖いんだもの」
「まだそんな事言ってるのか。この部屋にいると視線を感じるってヤツ」
彼に苦笑いをされて、依子は思い切り眉を下げる。
「信じてないのね?」
「依子がそう感じるって事は信じてるよ。だから安心できるように、この前も盗聴器とか隠しカメラを見つけてくれる業者を頼んだじゃないか。何もなかっただろ」
「だから……きっとそういうのじゃないのよ……」
「……幽霊とか?」
ついにプッと吹出した彼に、依子は手元の枕を投げつけた。
「笑わないで! だってこのアパート、やけに家賃が安くない? 駅近だし、建物は古いみたいだけど改装してあってすごく綺麗なのに。しかも一階は全部空いてるし、二階は私と端っこの大家さんだけ。訳アリ物件かもしれないじゃない!」
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