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(高志さん……! 出てよ、まだ仕事中なの……?)
携帯を耳に当てながら、事件の顛末を綴った先の文章に目を走らせる。
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順子さんは救急病院に搬送されたが、翌日死亡。
それまでに聴取出来た話によると、その日初めて自宅に訪ねてきた鈴木に「なぜ自分以外の男が部屋に出入りするのか」と激高され口論になったとのこと。
その後の調べで鈴木と順子さんの間には交友関係がなかった事が明らかとなり、同アパートで見かける順子さんに鈴木が一方的に好意を持っていたものと推測される。
尚、鈴木の自宅を捜査したところ、確かに二人に交流はなかったが、鈴木のアパートは
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ブツッと、いきなりディスプレイが真っ黒になり、電源が落ちた。
(……え?)
身体が凍りつく。
沈黙する黒い画面から、ザワザワとした陰の気配が溢れ出てくる。
(やだ……! なんで急に消えたの。犯人のアパートは……なに? その先は? ここが何だっていうの!?)
しんと静まり返った部屋。
四方八方から絡みつく粘着質な視線。
その時、無情に鳴り続けていた携帯の呼び出し音がふいに途切れた。
『……依子、どうした……』
「高志さんっ!」
弾かれたように依子は部屋の隅に移動し、携帯を握りしめた。
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