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「あったの! やっぱりここで昔、事件があった……! 私、ネットで調べたの。じゅ……順子さんって人がストーカーに殺されて……そ、それで……。やっぱりココ、何か居る!」
『落ち着けよ。いいか、依子。とにかく……』
「怖い! い、今パソコンもいきなり切れたの! 幽霊ってエネルギー体だから電波に乗るとか電気を操るとか、なんかの本で読んだことある……。わ、私、こんな所もう……!」
『いいからソコにいろ。俺を信じて』
「え? 高志さん来てくれるの!? 高志さ……!」
……ツーツーツー……
依子の言葉を最後まで聞かず、通話は一方的に切られてしまった。
(なんで……? こんな所、居たくない……っ!)
でも、高志は『信じろ』と言った。
普段から高志は、常に誠実で頼りになる恋人だった。その彼が言うことならば、依子は従うしかない。
「高志さん……。助けて……早く、早く来て……!」
部屋の片隅で硬く膝を抱え、身じろぎもせずに依子は時を数えた。
このアパートで、そしてこの部屋で……順子さんは切り刻まれ、犯人は凶器のカッターで自らも命を絶った。それはもう疑いようがない。
そしてこの部屋には何かが居ると、依子の本能が警鐘を鳴らす。
(カッターで……)
ふとテーブルの上に目をやると、パソコンの横にある文房具ケースからボールペンなどと一緒にカッターナイフも覗いている。
ゾクッと背筋に寒気が走った。
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