旅の途中で

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この世界は、不思議な力で満たされている。 これまでも魔法を使う《世界》だとか、超能力を使う《世界》だとか、いろんな《世界》に降り立ち、いろんな力を経験してきた。 どの世界も名は違えど、根本的なことは変わらない。 それぞれの《世界》での生き方も、力の使い方も。 この《世界》然り。 これまでに培ってきた力の使い方と同じように、ここでも力を使えるのは、俺にとってはありがたいことだった。 それぞれの《世界》で生きていくには力が必要不可欠だからだ。 目の前にいる魔物に向かって剣を構えながら、ふと脳裏に浮かんだ。 ーーいってらっしゃい。 最後にそう言われたのはいつだっただろうか。 少なくとも、数日や数ヶ月という単位の最近ではない。 「おや、戦闘中に考え事とは随分と余裕ですね。 何か気になることでも?」 俺の目の前にいた魔物を大剣で切り捨てたスーツ姿の青年ーフェイは、少し呆れたような顔で聞く。 「……少し昔のことを思い出しただけさ」 「昔のこと、ですか。それはいつの《世界》のことでしょう?」 顎に右手を添えて考える素振りをするフェイに、俺は刀を鞘に収めて答える。 「1つ前の世界だ」 最後の1匹をフェイが切り捨てた為に、倒すべき魔物は目の前にはいない。
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