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「……やはり、恋しいですか?」
「そうだな…恋しくないと言えば嘘になる」
過去を思い出すことは、これまでも幾度となくあった。だが、これほど前の《世界》を恋しく思ったのは初めてかもしれない。
嘘くさい笑みを向けたまま黙るフェイを見て、何度目かのため息をつく。
「人の顔を見てため息とは、ずいぶんと不仕付けですね。戻れないとわかっているのですから、諦めればいいものを」
「そうは言ってもだな……まあいい」
それよりも、と真剣な顔で口を開く。
「この《世界》はどうなんだ?」
「そうですね……やはり、と言うべきでしょうか。この《世界》でもないようですね」
悲しげにフェイが伝えてきた。
やはり、だ。
俺にとっても、『この世界ではない』と感じていたので納得の結果ではある。
「この旅はいつまで続くんだろうな」
思わず、本音がこぼれた。
「それは私にもわかりません。私としても、そろそろ終わらせたい所なんですが……」
わかっているさ。困った顔でこっちを見ないでほしいと思いながら歩みを進める。
「では、新しい《世界》へご案内します」
差し出された手を掴み、突如現れた扉を抜ける。
ーー行ってらっしゃい。私はずっとあなたの帰りを待っているから
どこかで声が聞こえた。
懐かしい声だ。
俺は小さく微笑んで、つぶやく。
「あぁ、行ってきます」
そうして、俺は新しい《世界》へと足を踏み入れた。
ーーここは貴方にとってどんな世界になるでしょうか。さぁ、《オリジナルの世界》を超えれるように頑張ってください。……私のためにも。
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