かりん

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どうして自分がこの映画を選んだのか。それは彼女が喜んでくれると思ったからだ。 特に理由は、と問われたとしても特には思いつかない。ただただ何となくだけど夏梨さんは猫が好きなんじゃないかと思ったのだ。しかし、それももしかしたら当然のことなのかもしれない。何と言っても幼馴染だ。記憶は無くなったとしても、今までの経験から無意識というものが働いて頭の中で覚えていたのかもしれない。 と、いうわけで、俺たちはとあるショッピングモールに併設されている映画館へと赴いた。 映画の内容はそれはもう、タイトルに恥じないものだった。最初から最後まで猫、ねこ、ネコ。 正直、俺にはその良さはよくわからなかったが。隣の夏梨さんは予想通り終始映画に釘付けだった。まさにスクリーンに食い入るように映画を見ていた。 そして、あっという間に2時間が過ぎ、俺たちはは映画館を後にした。 半歩前をやや早歩き気味に歩く夏梨さんに後ろから声をかける。 「夏梨さん?」 「な、なに?」 「いや、なんかとろんとした顔をしていたので。そんなに気に入りましたか?」 「そ、そうね。まあまあじゃないかしら」 顔を真っ赤にして、明後日の方向を向く夏梨さん。その可愛さはまさに筆舌に尽くしがたいものだった。 と、ここで俺の腹時計が「ぐ~」と鳴った。それはもう、騒がしいショッピングモールの中でも十分に聞こえるくらいの音量だ。 笑いをこらえている夏梨さんを横目に時計を見ると、もう午後2時を過ぎている。中途半端な時間での上映だったため、昼飯はまだ食べていない。 「それじゃあ、ご飯にでもしましょうか。何か食べたいものありますか?」 「まかせる」 その返事には、若干困惑したが、頼られることは悪くない。俺は辺りを見渡す。映画館を出ると、そこはショッピングモール内の飲食街だったため、選択肢はかなり多いと言えるこ。 これは、かなり悩んでしまう。しかし、ここで決めかねて優柔不断な男と思われるのも嫌だ。内心焦りの気持ちも持ちながら、更にもう一回見渡す。 そのとき、不意に一軒の店が目に入った。
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