第1章

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「さやか」  みきの声で振り向くと、クラスのみんな、先生、両親が期待するような眼差しで私を見つめていた。  その期待の正体を私は知っている。みんな、私のためにここまで計画してくれていたのか。 「泣くのまだ早いよ」  みきの茶化すような言葉でとっさに顔を下に向けた。みんなの楽し気に笑う声を聞きながら、私は映画で演じていたヒロインの気持ちにやっと重なった気がした。もう一度だ、これが本当の最後。みんなのために。  涙目の顔を上げ、映画のセリフを口にする。 「最高の青春をありがとう。最高の…… 最高の3年1組です!」  みんなを見渡し、今まで応援してくれていた事を思いだしていた。  左手を上げ、持っていた卒業証書の筒にグッと力を込め、涙と共に叫んだ。 「お前ら全員大好きだ! また会おうな!!」  おおおおおー!!  大きな叫びと宙に舞う卒業証書の筒を眺めながら、高校生活最後の最高の卒業式を迎えた。
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