男なら背中で泣きやがれ

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急に浮き上がってすごく早いスピードで走り出したから僕は怖くてしばらくの間目を瞑ってしがみついていた。 「おい。目ぇ開けてみてみろ!」 僕の前にいるカイトさんがエアバイクを止めて、そう僕達に声をかけた。言われた通り僕は恐る恐る目を開けて、自分の周りに広がっている光景を見て、息を飲んだ。 それは、沈んでいく夕日が遥かなる地平線に飲み込まれていく瞬間だった。僕もアニキも、母さんが昔描いていたキャンパス上の日没しか知らない。 「すげぇ…これが、日の入りってやつか…やっと、外に来たって実感が湧いてきたぜ…そうだろ?ウルフ?」 僕の後ろにいるアニキは僕の頭を持ってわしゃわしゃと乱暴になで始めた。 アニキは、いろいろ恥ずかしい時とか顔を見られたくない時に僕の頭をわしゃわしゃとつかむように撫でる。もしかしたらアニキは泣いてるのかもしれない。 そう思うと僕も泣けてきた… 「グスッ…母さん。母さんが見てた世界ってこんなに綺麗だったんだね…」 ペンダントを握りしめ、嗚咽が出ないまま、頬を涙が濡らす。 「なんだ?ウルフ?泣いてんのか?」 そのまま兄貴の方を見ると、アニキは笑顔で僕を見ていた。 「男はよ。泣いていい時と悪い時があんだよ。誰かが見てる時は絶対に泣くな。男なら背中で泣きやがれ。」 「うん。」 「だけどよ、誰かに何かを全部ぶちまける時は好きなだけ泣け。お前を受け止めてくれる奴の、胸で好きなだけ泣くといい。」 「うん。」 「泣いてスッキリしたら前を向いて突き進むんだ。お前なら、出来る。俺はそう信じてるからよ!」 「うん…」 正直アニキはなんで僕にこの事を今教えたのかわからない…でも、心に染みた言葉だったことは確かだった… 気がつくとカイトさんはゆっくりと運転してくれていた。 「そろそろ着くぞ。」 そう言って僕が顔を上げると、周りが空に囲まれた不思議な街が見えた。 「おーい!なんで私達より遅いのよ!」 エリスさんがエアバイクがいっぱい止まっている場所からこっちに手を振りながらそう叫んでいる。 「悪いな!ちょいと寄り道ってやつだ!」 カイトさんがそう言いながらエアバイクを止めると、僕達は空に浮かんでいる不思議な街に降り立った。
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