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「ふぅーっ…これで、修正終了…っと。」
地図を書き終わり、伸びをして、関節を伸ばしながら椅子から立ち上がり、多少のたちくらみを我慢しながら外へと足を進める。
「やっぱり…4つの国以外、わかんないなぁ…」
外に出て、太陽を浴びていると前からヒソヒソと声が聞こえてきた。
「あ…地図書きウルフだわ…」
「ホントだ!近づくと根暗が感染るわよ!行きましょ!」
村の人は掟に忠実で、外の世界に興味を示さない。
僕は、そういう点で周りから白い目で見られているんだろう…
「はぁ…」
陰口を聞こえるように叩かれ、重い気持ちを引きずりながら下を向いて歩いていると誰かにドンッとぶつかった。
「あっ、ごめんなさ…」
「何下向いてんだよ!」
上から力強い声がした。僕はその声に反応するようにパッと上を向いた。
「あ、アニキ!」
この人こそ、この村でただ1人の掟を破った男であり、僕に影響を与えた男。クロウのアニキだ。
「メソメソすんな!夢がねぇよりよっぽどいいだろ!あんな、ブス共の言う事なんか気にすんじゃねぇよ!」
僕の頭に大きな手をのせて髪の毛をくしゃくしゃと乱暴にアニキは撫でる。
アニキは両親をなくした僕を今みたいに叱咤激励してくれる。
誰がなんと言おうと僕の理想の漢だ。
「アニキ…」
尊敬の眼差しをアニキの目に向けていると、アニキは僕の目を見てこういった。
「ウルフ。もし、俺がこの村を出るって言ったら、着いてくるか?」
ニカっと太陽のように眩しく笑い、こんな提案をしてきた。
「え、あ、うん…。でも、そんなことできっこないよ…!」
「最初っから諦めてたら何も出来やしねぇよ!着いてくんのか!来ねぇのか?」
諦める、無理だ。そういう言葉がアニキはめっぽう嫌いだ。ほぼ禁句だって言ってもいいくらい反発する。
「行く!アニキがいるなら…」
グッと拳を握り勇気を振り絞って僕はそう答えた。
「よーし!それでこそ、俺の弟分だ!よーし、俺達『紅蓮の尻尾』の最初の任務は脱出だ!」
『紅蓮の尻尾』とは、アニキがリーダとしてこの村でつくった集団。周りからはただの悪ガキ集団、チンピラ集団としか思われていないが、アニキはコレを『ギルド』と呼んでいる。
アニキにも俺と同じように夢がある。
それが、首都に行って『ギルド』を作ることらしい。
それが叶えるためにこの人は、毎日森から出るルートを調べている。
この夢を叶えるためなら僕も力を貸したいと思う。
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