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「うんっ!…て言ってもどうしたらいいかわからないよ?」
そのときの僕は不安そうな顔をしていたのだろうか?アニキは撫でていた頭を一層強く髪の毛をクシャクシャにした。
「やめてよアニキー!クセ毛なのに、もっと変な髪型になったらどうするんだよ!?」
僕が慌てふためく姿を見てアニキは嬉しそうに笑っている。僕はいつもこうやってアニキにいじられながら、ふたりで過ごすことが多い。嫌ではないけど。
「そんなことよりウルフ。あの『ジンジャ』の中に何が祀ってあるか知ってるか?」
この村には『ジンジャ』という簡易的な神殿みたいなものがある。
母さんが生きている頃に、聞いたことがある。
母さんが言うにはジパンド式の神殿らしい。ジパンドには物を神様の代わりに祀る習慣があると聞いた。だからあのジンジャにもなにか物が祀られているんだろうともいっていたな…
「そういえば母さんは、モノって言ってたけど…」
「あの中には二つのカタナあるらしい。」
「カタナ?」
なんだろう…母さんからも聞いたことのない言葉だ…
上を見上げ首をかしげて僕はアニキに説明を求める。
「アルヴァンテリオで言う剣だ。それもジパンド製らしいけどな…」
「へぇー…」
なるほど、母さんが僕にカタナを教えなかったのは武器だったからだな…母さんは争いが嫌いな人だったから。
「それでそのカタナがどうしたの?」
誇らしげにふんぞり返るアニキの顔を見てそう答えると真剣な目をして
「貰っちまおうぜ。」
度肝を抜かれた。まさか、そんなことをいうとは夢にも思わなかったから僕は戸惑って言葉がしばらくでなかった。
「無理だよ!そんなこと…」
「無理を通せ!そんで、自分のやりてぇ事を掴むんだよ!」
アニキは真っ直ぐに僕の目を見てそう言い放った。僕はいつもこの真っ直ぐな目に背中を押される。いつもやってみようって気持ちになる。
「でも、策は、あるの?」
腕を組みジンジャの方を見つめて真剣な顔をして、しばらくして口を開いた。
「思いつかん。」
「えぇ…」
いきなりぐったりと重く疲れがのしかかってくるかのように、僕の体はうなだれる。
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