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アニキと僕の作戦は無事成功した。アニキは気絶している男達2人を引きずって森の中へと連れていき、どこかに放置してきた後、僕達の前に戻ってきた。
「アニキー!」
アニキが帰ってくると僕は近くに駆けより、アニキの手を握った。
「おうおう!本当によく頑張ったな。」
握った手を引いて、アニキは優しく抱きしめてくれた。本当は怖かったのけど我慢して言わない。僕がアニキの腰に捕まっていると、優しく頭をポンポンと撫でてくれた。
「村長。俺とウルフは村を出るぞ。」
腕の中に僕を抱いたままアニキは村長に向かって強い口調で言い放った。
「な、ならん!しきたりを…」
「うるせぇっ!今日あんたに何ができた?ただ、ビビって震えてただけだろうが!」
「それがどうした!」
「ずっと前に、俺がなんで外に出ちゃいけないか聞いた時お前なんて答えた!」
ずっと目を瞑っていた僕は、薄らと目を開け村長の顔を見た。すると村長は複雑な顔をしていた。
「この村を危険から守るためだ。そう言ったよな!それがどうだ?今日お前は、及び腰でウルフがしてることを見てるだけだ!こんなの、外に出ようが、中にいようが同じだろうが!」
危険な事には変わりない。アニキはそう言いたいんだろう。おそらく、それが村長もわかってるから複雑な顔をしている
「とにかく、俺とウルフは外に出る。あとどうするかは、お前次第だ。」
そう言うとアニキは抱きしめていた手を解き、僕の手を握った。大きくてゴツゴツしてるけど優しい手だ。
「これは、お前の武器だ。」
いつの間にか紐が取り付けられていたカタナを僕にかける。
「俺にはコイツがいる。」
腰巻きに刺したカタナを入れ物ごと持ち上げ肩に担いだアニキはニカっと笑い僕の手を引いて森の外へと歩き出した。
「あ、ちょっと待って!アニキ!」
まっすぐ前を向いて歩みを進めようとしているアニキに向かって、僕は話しかけた。
「地図と、ペンだけとってくる!」
「おう!待っててやる!急いで取ってこい!」
呆然としている村長を尻目に僕は、ジンジャから急いで自宅へと戻り、扉を開け放ち机の上の地図と羽根ペンとインクをカバンに突っ込んで背中に背負った。
「よし…!」
走って外に出ようと玄関の方へ向きなおると、視界の端に赤い物が見えた。
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