第1章

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 忙しい両親に心配かけまいとしてそう言ってるのか、はたまた甘やかしてくれるクルーたちの方が楽しいと思っているのか。  真意は問うたことがないが、おかげでアルトもシェリルもしっかり仕事をさせてもらっていた。  双子の姉である陽菜(ひなた)は外見はアルトに似た日本人形のような子で、口数も少なく、少しおっとりしているようであるが我が強く、一度決めるとそれを曲げない頑固者。  弟の朝輝(あさひ)は髪は猫っ毛で少しお調子者でもあるが、真面目で優しいところもあり、歌好きなところまでシェリルそっくりだ。将来の夢は歌って踊れるパイロットだと聞いて、クルーたちは間違いなく二人の子だと笑った。  SMSフロンティア支社で帰社の手続きを終えて、ロビーに差し掛かる。  疲れを感じて、無事帰ってきたことに安堵の深い息を吐いたとき、後ろから何かがぶつかってきた。 「お帰りなさい!」  腰の辺りに抱き付いて自分を見上げる双子の嬉しそうな顔を見たら、疲れなど一辺に吹き飛んだ。 「ただいま。いい子にしてたか?」 「もちろん!ね、お土産は?」 「ちゃんと買ってきたよ」  さっそくお土産の要求かと少しガッカリしたが、それでも自分にしがみついて離れない息子の姿に顔が綻ぶ。
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