第1章

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「家に帰ったら渡すからな」  歓喜の声を上げる息子に対し、大人しくじっと自分を見上げる愛娘に気付いて、視線を同じ高さにするのに膝を折る。 「お前は良かったのか?要らないって言ってたけど」 「うん、パパが帰ってきたから要らない」 「ひなた」  好きそうなぬいぐるみは買ってきたが、可愛いこと言ってくれると感動していると、 「…今度の歌舞伎のチケット欲しい」  ひなたの一言に、そういうことかと肩を落とした。 「分かったよ。兄さんに言って用意してもらう」  アルトの返事にそんなに表情は変わらないまでも、嬉しかったのか首に腕を回してギュッと抱き付いた。 「そういえば、シェリルは?」 「レコーディングで煮詰まってた」 「アルトママの肉じゃが食べたいって言ってたよ」 「ママって言うな!」  怒られても笑っているあさひに、教え込んだ悪友のことを少し恨みながらため息を吐いた。 「ね、パパ、今日ミシェルくんのお家に泊まるね」 「何だよ、帰ってきたのに」 「久しぶりだから、二人きりにしてやれって」  余計な入れ知恵しやがって!と思いながら、後で絶対に文句を言ってやろうと心に決めた。 「パパ、僕、弟が欲しい」 「あさひ!」  意味分かってるのか?と頭を抱えていると、ひなたがあさひの手を掴んだ。
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