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「それにしても……お前は馬鹿か?」
「なっ! いきなり何ですか!?」
「あのなぁ……。要は、ここはお前のアジトだろ? 敵の俺に居場所を教えてどうする? 元の身体に戻ったら確実にここに捕まえにくるぞ」
「……そっ! そ、それは、引っ越しするに決まっているじゃないですか。はは、はは」
やはり何も考えていなかったらしい。やっぱりこいつは馬鹿だ。
だが一方で、ソネットは天才でもある。この少女が最高レベルのセキュリティを難なく突破し、国家の中枢システムにアクセスしたなど誰が想像できるだろうか。
天才で馬鹿。馬鹿で天才。だが、いずれにせよこの天然成分満載の相手は疲れる。
実際、俺はこいつを放り出して一人で逃げることもできた。だが、そうしないのは、迷宮に詳しいソネットがいれば特対から逃げるのに便利なのと、自分の本来の身体からあまり目を離したくないという理由がある。
何より、元に戻った時に即座にゴーストを捕えられる距離にいなければならない。
つまり、結局俺はこいつのそばにいるしかないのだ。
「……はぁ」
「何辛気臭い顔しているんですか!? 綺麗な顔が台無しですよ。さあ、お腹すきましたね。ご飯にしましょうっ!」
腹の底から溜め息をついた俺に、ソネットは花のような笑顔を向けた。
――ったく。何でそんなに順応早いんだよ。……っていうか、自分で綺麗って言うな。
俺はそう心で唱え、もう一度深い溜め息をついた。
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