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「レド・ツェイラー。特対所属。年は十八。以上」
「ちょ、なんですか、それっ。短すぎですよっ」
「じゃあ、仕事内容を教えてやる。それはお前のような国家レベルの問題児を始末することだ」
「……むぅ。またそういうことを言う。ご家族とかは?」
急な問い掛けに、一瞬心臓がドクンと跳ねる。
「…………いねぇよ」
ようやく言葉を絞り出すと、ソネットはニパッと口角を上げた。
「じゃあ、私と一緒ですね」
無邪気な笑顔。その無垢な表情を見ている内に、こわばっていた身体からゆっくりと力が抜ける。だが、胸に手をやると鼓動はまだトクトクと高鳴ったままだ。
くそ……もう、昔のことなのに。
奥歯を噛んで前を向くと、瞳を大きく開いたソネットが唇をワナワナと震わせていた。
「レ、レドさん……な、何をやっているんですか?」
「……ん? 何だ?」
「そ、その手です! 一体、どこを触っているんですか!?」
「あぁ?」
言われて見ると、俺の右手は自らの左胸をむんずと掴んでいた。男の時とは異なる、わずかに、ふにり、とした感触が手の平に伝わっている。
「あっ、いや、待て。これは、馬鹿っ。そうじゃなくてなっ!」
「わーんっ。我が家に変態さんがいるよー。おじいちゃん、助けてー!」
「お、おいっ! こら、勘違いするな。むしろ平らすぎてわからなかったわ!」
慌てた俺は立ち上がって叫んだ。
だが実際、本当にわずかに、ふにり、とした感触しかない。ゴーストには類稀なる美貌と驚天の才能が与えられているが、同時に馬鹿で、貧乳だ。
天は、三物は与えなかった。
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