第二章 迷宮の街

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「レド・ツェイラー。特対所属。年は十八。以上」 「ちょ、なんですか、それっ。短すぎですよっ」 「じゃあ、仕事内容を教えてやる。それはお前のような国家レベルの問題児を始末することだ」  「……むぅ。またそういうことを言う。ご家族とかは?」  急な問い掛けに、一瞬心臓がドクンと跳ねる。 「…………いねぇよ」  ようやく言葉を絞り出すと、ソネットはニパッと口角を上げた。 「じゃあ、私と一緒ですね」  無邪気な笑顔。その無垢な表情を見ている内に、こわばっていた身体からゆっくりと力が抜ける。だが、胸に手をやると鼓動はまだトクトクと高鳴ったままだ。  くそ……もう、昔のことなのに。  奥歯を噛んで前を向くと、瞳を大きく開いたソネットが唇をワナワナと震わせていた。 「レ、レドさん……な、何をやっているんですか?」 「……ん? 何だ?」 「そ、その手です! 一体、どこを触っているんですか!?」 「あぁ?」  言われて見ると、俺の右手は自らの左胸をむんずと掴んでいた。男の時とは異なる、わずかに、ふにり、とした感触が手の平に伝わっている。 「あっ、いや、待て。これは、馬鹿っ。そうじゃなくてなっ!」 「わーんっ。我が家に変態さんがいるよー。おじいちゃん、助けてー!」 「お、おいっ! こら、勘違いするな。むしろ平らすぎてわからなかったわ!」  慌てた俺は立ち上がって叫んだ。  だが実際、本当にわずかに、ふにり、とした感触しかない。ゴーストには類稀なる美貌と驚天の才能が与えられているが、同時に馬鹿で、貧乳だ。  天は、三物は与えなかった。
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