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「あっ、触っておきながらひどいです。とにかく責任は取ってもらいますよ!」
「……は? 責任だと?」
「ええ。おじいちゃんが言っていました。胸を触らせていいのは結婚相手だけだって。という訳でお嫁にもらって下さい」
「という訳で、じゃねえっ! 馬鹿野郎っ。そんなことさらりと言うなっ!」
俺は立ち上がったまま再度叫ぶ。
ああ、もう!
この馬鹿と会話していると眩暈がしてくる。わしわしと両手で頭を掻きむしった俺は、ガタンと椅子に腰を下ろした。
「とにかくだ。もう会話は十分したぞ。さっさとリモコンよこせ」
「あ、ちょ、ちょっと」
俺はソネットが後ろ手に持っていたリモコンを取り上げ、電源ボタンを押した。
勿論、バラエティ番組を見たい訳じゃない。
とにかく、一刻も早く情報収集をしたいのだ。この魂交換という訳のわからない現象を解明し、さっさと元の身体に戻るのが俺の最優先事項だ。しかし、くるくるとチャンネルを変えても、迷宮街で発生した奇妙な現象を扱っている局は一つも見当たらなかった。
エメロは事態がはっきりするまで街を封鎖する、と言っていた。おそらく情報についても箝口令が敷かれているのだろう。
「……ち。まいったな」
何か良い方法はないか。ぼりぼりと頭を掻きながら、視線を前にやる。
そこには口の端にパン屑をつけた童顔が座っていた。
……いるじゃねえか、ここに。情報処理の超エキスパートが。
「おい。ゴ……いや、ソネット。やって欲しいことがある」
「ふふ。ちゃんと名前が言えましたね。いいですよ。結婚してあげます」
「そうか。じゃあこの指輪を受け取れ」
「ちょ、それはフォークですっ。笑顔で振りかぶらないでくださいっ」
俺は忌々しげに舌打ちをして、フォークを皿に戻した。
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