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「開くのは簡単ではないです。パスワードの生成規則がないか色々調べましたが、やはり完全にランダムのようでした。過去に正解が出たこともあったようですが、その場合はパスワードを再設定する仕組みになっていたようなので、その筋から追うのも無理です。しかも設定の担当者ももう亡くなっているみたいなんです」
「……じゃあ、駄目じゃねえか」
「いえ。総当たりで試すプログラムを用意することにしました。少し時間はかかりますが、扉まで行ければ確実に開くことができます」
熱っぽく語るソネットを見ている内に、俺はようやくこいつがなぜ国の中枢システムにアクセスしたのかわかった気がした。
テーマパークの閉鎖とともに、この迷宮街の設計図やそれに類する資料の多くが失われたと聞く。だが、そこでわずかに残った資料は現在国が管理している。ゴーストは、おそらくそれを見たかったのだ。最下層に行くために。しかし――
「そもそも何故そんな所に行きたい? ただの女の人形がベッドに寝ているだけだぞ」
「えっ!? レドさん、行ったことがあるんですか!?」
「……いや、ねえよ。人から聞いただけだ」
「……そうですか。私が行きたいのは、人形がある場所ではなく、その隣にある部屋なんです」
スチール机に手をついたソネットは、俺の方にゆっくりと身を乗り出した。
「……隣? ……そこに何がある?」
「予備の中央制御室です」
おもむろに口を開いた元俺の顔を、俺は怪訝な表情で見つめた。
中央――制御室?
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