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「レジャーランドの全システムを制御する場所です。地上にあった中央制御室はもう機材が持ち去られたりして使い物にならないのですが、地下に閉じ込められた時のために、最下層の壁の後ろに予備の制御室が隠されているんです。おそらくそこはまだ生きているはずです」
テーマパークの終焉以来、開かずの間となっているであろう地下七層。もしその場所が運命の扉によって手つかずのまま残されていたならば、施設が生きている可能性は確かにある。
だが――
俺は嫌な予感がして、ごくりと唾を飲み込んだ。
「……お前がやりたいことっていうのは……」
「私はもう一度この迷宮街を、テーマパークを稼働させたいんです」
力強い言葉。ソネットの目的。それはこの廃墟の街に、再び命を吹き込むこと。
俺は反射的に椅子を引いて立ち上がった。
「馬鹿がっ。そんなこと、無理に決まっているだろうが! 仮にその中央制御室が生きていたとして、設備自体が老朽化して使い物になんねえはずだ!」
「三年前から毎日少しずつ整備してきました。全部は無理ですが、主な電気系統の接続、それにハードの修繕は概ね終了したんです。ぼろぼろに見えても、今なら十分稼働に耐えられるはずです。後は、中央制御室で起動装置を作動させるだけです」
すらすらと語られる内容に、一瞬頭がついていかない。
ゴーストは三年前からたった一人で、この広大な迷宮を整備してまわっていたと言った。本気でこの廃墟を蘇えらせようとしているのか。
「おじいちゃんは言っていました。迷宮街がテーマパークだった頃は、来る人も働く人も皆笑顔だったって。一日の最後にあがる花火はまるで夢のようだったって。だから、おじいちゃんが死んじゃった後、私は決心したんです。ここを夢の国に戻そうって。今は、良くない話もいっぱい聞きますけど、街が息を取り戻せばきっと……」
その瞬間。
目の前のスチール机が盛大にひっくり返った。
俺が殴りつけたせいだ。机上の食器や残った料理も当然のように床にぶちまけられる。
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