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「馬鹿がっ! そんなもん絶対無理だっ。ガキの夢物語の方がまだ現実味があるっ! 仮に、この街でアトラクションが動き、イルミネーションが輝いたとしてそれが何だっ!? 浮浪者が立ち去り、悪党達が改心するとでも言うのかっ!? お前がやろうとしていることは何の意味もないっ!」
俺はいきり立って叫ぶ。だが、そうではない。俺が本当に言いたいことは――
「とにかく。テーマパークを復活させるなんてことは俺が絶対に許さねえ」
そう。この忌まわしい街は二度と息などしてはいけない。
だって、そうじゃなきゃ――
「……じゃあ、私もレドさんには協力しません」
俺をしばらく睨みつけたソネットは、そう言うと奥の部屋に消えていった。
「…………」
主が消えた部屋が急に広くなったように感じる。つけっぱなしのテレビからは、女タレントのカラカラと嗤う声が空虚に響いていた。
少しの間、放心したように立ちすくんでいると、壁に掛かかった俺の黒いコートから着信音が響いた。近づいて内ポケットを探ると、ブルブルと震える小型端末が手に触れる。
画面には「マツリ・ジャスティン」と表示されていた。一瞬目を疑ったが、何度見ても着信元は俺に電撃をくらわせた特対の後輩だ。
――そういえば、こいつも馬鹿だった。
俺の居場所を探ろうとしているのかもしれないが、応答する訳がない。
しかし、電源を切ろうとして、ふと指を止めた。
待て。特対はこの魂交換について何か掴んでいるかもしれない。ゴーストの協力が得られない今、奴らの情報は貴重だ。
さっきはつい熱くなってしまったが、最優先事項は元の身体に戻ることだ。でなければ俺の未来はない。幸い入り組んだ迷宮街では逆探知をされても具体的な位置特定は困難なはずだ。少し思案した俺は、応答ボタンに指をかけた。
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