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「……レドだ」
「あれ? 先輩の端末から女の声? 私というものがありながら、ひどいっス。幻滅っス!」
「このクソカス! 俺はゴーストと身体が入れ替わったって言っだろうが!」
「……あ、そうでした。すいませんっス。その容赦のない言い方は確かに先輩っス……」
「……で、どうした、マツリ? エメロから俺の居場所を聞き出せ、とでも言われたか?」
手始めにそう質問すると、電話口の相手は少し黙った。
「……いや。そうじゃないんス。私どうしたらいいかわからなくて、思わず先輩に電話しちゃったんス。兄さんは、重罪人の身体だから捕えるべきだ、って言ってたんスけど……」
マツリの口調は迷いを帯びている。
これはチャンスかもしれない。少しでも情報を引き出せればと思ったが、この調子なら更にネタを得られる可能性がある。
俺は思い切って後輩に告げた。
「マツリ。俺に特対が掴んでいる情報を流せ」
「え、は?」
「お前らとしてもこの現象は解明したいはずだ。俺は迷宮街にいる。中の情報はお前らより掴みやすい。ギブアンドテイクでいこうぜ」
「いや、でも、それは……」
「部屋に入れてやる」
「……は?」
「身体が元に戻ったら部屋に入れてやるよ。しかもベッド使用権つきだ」
「ほ、ほ、ほほほほ、ほ、本当っスかぁ!? わかったっス! 約束っスよ!」
興奮した声が端末の向こうで響く。くく。部屋に入れるくらいでチョロイ奴だ。
勿論、俺の部屋とは言っていない。監獄の豚バコにでもぶちこんでやる。せいぜい石のように固いベッドで良い夢を見るがいい。
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