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「えっと。じゃあ今日わかったことですが、先輩達に逃げられた後、兄さんと周辺を見てまわったんス。その結果、どうやらこの魂交換現象は基本的に迷宮街だけで起こっていることはわかったんス」
「ふん。この街で何かが起こったってことか。それで被害規模はどのくらいだ?」
「拡声器で呼びかけたところ百人くらいが集まった感じっス。皆かなり混乱しているんで、街の近くのホテルに匿っているっス。ただ、呼びかけに応じない人達もいるんで……」
「そうだろうな。俺みたいに罪人と入れ替わったんじゃ迂闊に出られない。まあ、そんな運の悪い奴あんまりいないと思うが……」
俺が自嘲気味に言うと、マツリは喉が詰まったような呻きをあげた。
「……どうした?」
「先輩。……実は、かなりまずいことになっているんス。さっき基本的には迷宮街で起こっていると言いましたよね。ただ、街に近い施設には影響が及んじゃっているんス」
「街に近い施設? そんなもんないだろ。ここはほとんど陸の孤島だ」
「いや、一つあるんス……」
「何だ?」
「迷宮監獄」
マツリの台詞。少し遅れてその重大さに理解が追いついてくる。
「……おい。それって……」
「はい。監獄に収監していた囚人達の一部が騒ぎ出したんス。気がついたら牢屋の中にいたって。つまり、何人かの囚人の魂が迷宮街の人間と入れ替わっているようなんス。奴らは今、自由を手に入れたことになります」
ガツンと殴られたような衝撃が全身を襲う。
つまり、せっかく監獄に捕えた悪党が別の身体で再び表に出てきたということ。
背筋がぞわりと震える。
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